東日本大震災で津波により壊滅的被害を受けた地域の再建

2011年3月22日

被 災地では、現在、不明者の捜索活動、原子力発電所事故対応、各種インフラの復旧活動が行われる中、多くの被災者は困難な避難生活を送っている。交通網、物 資調達、地域の基幹施設は、まだ回復の途上にあり、外部からアクセスすることも一般には困難である。今後、被災者は避難生活から仮住まいを経て再建への道 をたどることになるが、今のところ将来への展望が見えていない状況であると考えられる。

このような場合、被害の実相を見据えた上で、将来に展望をもてる復興の見通しを示すことが、被災者への支援の一つとなる。そのためには産業構造・立地の再 編も含めた復興ヴィジョンを示す必要があるが、以下では、漁業等を地域産業の中心と考えた場合の、津波からの安全を確保しつつ現地再建が可能となる方向性 を検討した。

津 波を受けた地域で再び生活を始める際、問題となるのは津波による危険性をどのように考慮するかある。同じ規模の災害は約千年後、もうすこし範囲が限られる 津波被害(明治三陸津波,昭和三陸津波,チリ地震津波程度)は数十年後(近辺では間もなく起こるという予測もある。)となる。今回の田老町で効果が無かっ た高さ約10メートル規模の堤防は、範囲が限られる津波であっても、それを超える津波が来襲する場合もある。

こ れまでの津波災害からこの地は再建してきたのだから、今回も同じように再建すればよい,元の生活を取り戻すのが最も重要だとの考え方がある一方,同じ悲劇 は繰り返したくないという想いは多くの人がいだくと考えられる。津波の被害が発生しない場所に移転するということは選択肢であるが、漁業を生業とする地域 では生活の不便から現実的ではなく,元のまちをそのまま復興したいという考え方が強まる。しかし、元の場所に戻るという選択肢の場合であっても、現実的に 可能な津波からの安全確保策を示すことができれば、多くの人の想いに応えることとなる。

今 回の災害で津波により壊滅的な被害を受けている地域(近くに裏山等がなく適切な避難場所がなかった地域)であっても,行政庁舎、病院などの中層建築物(地 域によって安全であった階の高さは異なる)に避難して助かった人々は多数に上る(どのくらいの範囲から避難できたか等、今後調査する必要がある)。

そ こで、避難施設となる中層建築物を地域の公共施設や集合住宅として適正に配置し、地震後津波襲来まで時間的余裕が少ない場合であっても避難しやすくして安 全を確保することが考えられる。この対策は、震災復興の完了とともに安全が確保できることになるので、安心して地域に戻る計画を相談することにつながる。

このようなアイデアは、既に多くの人から示されているが,実施可能とするためには,以下のことを十分に検討する必要がある。

・地域の条件(人口密度、避難時間、津波到達高さ等)に合致した避難施設の配置

・津波による避難施設への影響防止措置(津波火災を防ぐ港湾施設の配置、建物の構造耐力の確保など)

・気候、風土、地域の記憶,住民同士のコミュニケーションに配慮したすぐれた建築デザインの提案

・地域の再建に見合った制度の整備(避難施設となる集合住宅の整備事業など)

・地域再建の道筋、地域再建の合意形成手法の考案

以上の検討を十分に行って,被災した人々に提示できれば,困難を極めると考えられる地域再建の合意形成に寄与できると考える。

都市安全研究センター・リスクマネジメント大研究分野・安全都市づくり研究分野 教授 北後 明彦

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。