東北関東大震災のよりよき復興にむけて(その4)

2011年3月22日

「東北関東大震災のよりよき復興に向けて(その3)」からの続き

6.住宅復興・まちづくり

(1)災害公営住宅

住 宅復興の基本施策として災害公営住宅がある。従前賃貸住宅に住んでいた人はもちろん、持家の人も、住宅を始め財産をすべて失ない、資産・収入も少ない被災 者はそうした施策に頼らざるを得ない。災害公営住宅は、仮設住宅と同様、なるべく従前居住地に近い安全場所で、地域コミュニティを保持しながら暮らせるよ うに建設・入居を行うのが基本原則である。

公営住宅でも孤独死などの発生が起こらないように配慮することが極めて重要である。阪神大震災の復興公営住宅では、2010年末までに681人が孤独死で亡くなっており、仮設住宅での死者と合わせると、917人に上る。入居者の孤立化を招かないためにも、建物形式は、安く・早く・大量にとの観点から単純に大規模な集合住宅にするのではなく、芦屋市若宮地区や山古志地区などで行われたように小規模、低層の住棟を重視すべきである。

(2)借上げ公営住宅

住宅復興を急ぐ観点から、また費用節減の観点から、民間住宅やUR住 宅を借上げて公営住宅として賃貸する方式を取ることがある。この方式は必ずしも不適当ではないが、民間家主等との借上げ契約期間満了時に入居する被災者を 追い出すことがあってはならない。阪神大震災の復興借上げ住宅で、今現在この問題が起こっており、高齢の被災者が大きな困難・不安に直面している。被災者 の生活回復・再建を支援する復興住宅の役割であり、通常の公営住宅と同等の扱いとなるよう配慮が必要である。

(3)自力再建への支援

災 害公営住宅は行政が直接支援するプログラムとして明快であるが、すべての被災者がそれに適合するわけではない。被災者の多くは、自分で家を再建せざるを得 ないし、またそれを望む人も多いであろう。元の土地に自分で家を再建できれば、被災者にとってわかりやすく、なにより心安まる復興となろう。そこで、国や 自治体が、自力再建する人の支援を行うことが重要であるが、現行法では、一般施策としては「被災者生活再建支援法」(全壊世帯に300万円の支援金)があるのみで、これに各県の上乗せ支援金や義捐金の配分がどこまで積み上げられるかによって、被災者の受け取り可能な支援金が決まる。

これまでの事例では、最高600~650万円程度で平均的な住宅を建設費の半額程度になっていたが、今回どこまで、支援が届くかが重要である。石川県のふるさと型住宅への支援金加算や新潟県のリバースモーゲジによる資金供給なども参考にし、いっそう充実した資金供給が望まれる。

被 災者生活再建支援法は、阪神・淡路大震災のあと、被災者の運動で成立し、その後の法改正を経て、ようやく住宅再建に役立つレベルまで達したのであるが、い まだ十分とは言えず、この際、抜本的な改正が望まれる。これまでも、半壊や大規模半壊などの扱いが問題となってきたが、今回の津波で被害を受けて建物が一 応残っている場合などの扱いも、改善しなければならないだろう。

(4)ローコスト住宅の推進

自力再建を支援するプログラムとして支援金の支給と同時に、他方でローコストの住宅建設を促進することも重要である。中越沖地震の柏崎市では、平米当り10万円で住宅供給が行われ、少なからぬ被災者が救われた。こうした事例を検討し、多数の地元業者が、ローコスト住宅供給に取り組むことを行政が支援し、地域経済の活性化につなげるべきであろう。

(5)地域の復興・まちづくり

住 宅復興は、被災した市街地や集落の復興をどうするかということと切り離せない。今回の被害が大規模で複合的であることがその点に重くのしかかってくる。多 くの地域で、元の地に町や集落を再建するべきか、あるいは集団的に移転するべきかという選択が迫られることになろう。そしてその意思決定を誰がどのような プロセス・手続きで行うかということ自身が大きな問題である。地域の被災状況によって異なるであろうし、また、仮設居住の場が被災地の近くに確保できる か、遠隔地に転出せざるを得ないか、地域ごとにまとまれるか、拡散するかといった仮設居住のパターンによって、合意形成の方法は異なろう。いずれにして も、被災者の生活再建を軸において、民主主義的に合意する方法を見出すしかない。この点は、阪神大震災のとき以上に大きな困難に直面すると思われる。適切 な形での外部支援が欠かせないだろう。

移転の場合には、全部移転や部分移転、遠距離の移転、近距離の移転など、さまざまタイプによる得失を過去の事例(奥尻、玄界島、中越や四川、スマトラなど)を検討し、地域の実情に合わせた誤りのない選択が必要である。

元 の地での復興にも多くの困難が伴う。そのひとつが津波被災地の場合で、土地の移動や陥没、敷地境界の消滅といった現象に対して、どのようにして町を復興す るかが大きな課題になろう。そこでは、敷地境界を再画定することや、建物補償ができない被災者への救済といった課題があり、地震による倒壊だけの被害地と は違った対応が求められる。ひとつの案としては、(小規模)住宅地区改良事業や地籍整備型区画整理事業の活用・改善などがありうるのではないか。これらの 地域では、従前地での再建にせよ、移転再建にせよ、被災者が各人の将来を考える上で、従前資産の確定が不可欠なので、敷地の明確化などの作業が急がれる。 また、将来の津波災害の恐れといった問題も復興の方向性を左右する。是まで以上の巨大な防潮堤を万里の長城のように構築するといった案も浮上しようが、津 波に対して最小限生命が守られるような、避難施設をかねた堅固な建物を住宅とするといったような現実的な案も検討に値しよう。その具体策を実現できる新制 度の検討も急ぐべきである。

「東北関東大震災のよりよき復興にむけて」完

工学研究科建築学専攻 教授 塩崎 賢明

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

w

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。